オーストラリアには、マッサージセラピスト向けの資格や専門コースが豊富に用意されており、就職先もクリニックやスパ、スポーツクラブなど多岐にわたります。最低賃金や時給水準も日本より高く、「好きなことを仕事にしながら海外で働く」キャリアを考えやすい国の一つです。
一方で、日本とオーストラリアでは「マッサージ」という言葉の意味や資格の位置づけが異なります。将来の進路や永住権まで見据える場合は、大学・TAFE・専門学校・ビザの関係を整理したうえでプランを立てることが重要です。
このページではオーストラリア大学留学専門サポートセンターの視点から、
- 日本とオーストラリアにおけるマッサージ職の違い
- オーストラリアでマッサージを学ぶメリット
- 代表的な資格・専門学校(TAFEを含む)の例
- 卒業後の進路・費用の目安・よくある質問
を整理してご紹介します。
「大学・TAFEを軸にしつつ、マッサージやウェルネス分野も視野に入れたい」方の情報収集の入口としてご活用ください。
日本とオーストラリアの「マッサージ職」の違い
まずは、職業としてのマッサージが日本とオーストラリアでどのように違うのかを確認しておきましょう。
オーストラリア:リメディアルマッサージが主流、職場の幅も広い
オーストラリアでは、単なるリラクゼーションだけでなく、
- 痛みの軽減
- 固まった筋肉や関節のコンディショニング
- スポーツや高齢者ケアにおける機能回復のサポート
といった「リメディアルマッサージ(Remedial Massage)」が広く行われています。お客さま一人ひとりの症状や悩みに合わせて施術内容を組み立てるのが特徴です。
リメディアルマッサージの技術を身につけることで、
- リラクゼーションサロン・スパ
- 治療目的のマッサージクリニック
- スポーツ選手向けのケア
- 高齢者施設・リハビリ関連の現場
など、幅広いフィールドでの就職が視野に入ります。
オーストラリアでも資格なしでローカルのマッサージセラピストとして働くことは基本的に難しく、専門学校やTAFEでの学びが出発点になるケースが一般的です。
日本:国家資格「あん摩マッサージ指圧師」が中心
日本では、治療を目的とした「マッサージ」を仕事として行う場合、国家資格「あん摩マッサージ指圧師」の取得が必要です。
- 高校卒業後、指定の養成機関(大学・短大・専門学校など)で3年以上学ぶ
- 国家試験に合格することで資格取得
- この資格を持つ人のみが「マッサージ」と名乗って治療行為を行える
一方で、オーストラリアは国家資格一本というより、レベル別・分野別の資格が複数存在する仕組みになっており、リラクゼーション寄りから医療寄りまで、さまざまな領域のマッサージが職業として成立しています。
オーストラリアでマッサージを学ぶメリット
では、なぜオーストラリアでマッサージを学ぶ人が増えているのでしょうか。主なポイントを整理してみます。
専門学校でオイル・リメディアル・スポーツ系などを実践的に学べる
オーストラリアの専門学校やTAFEでは、マッサージ関連のコースが細かく分かれており、
- オイルマッサージ(リラクゼーション)
- リメディアルマッサージ
- スポーツマッサージ・筋膜リリース
- アロマテラピー・カッピング(吸い玉)・一部の鍼治療に関わる内容 など
といった技術を実習中心で学べるカリキュラムが整っています。
コースによっては、解剖生理学や筋骨格の評価方法まで学び、クリニックやスポーツ現場で即戦力となるレベルを目指すことも可能です。
給与水準が高く、歩合制でしっかり稼げるケースも
オーストラリアの最低賃金は日本よりも高く、マッサージセラピストの時給中央値は一般的なアルバイトより高めに設定されていることが多いと言われています。
- 最低賃金が高い国なので「ベースの時給」が高め
- 歩合制のサロンでは「施術人数や売上」に応じて収入アップ
- 勤務日数・時間を自分のライフスタイルに合わせやすい
一方で、お客さまが少ない日は収入が少なくなる可能性もあるため、「安定性重視か、実力に応じて稼ぎたいか」によって勤務先や働き方を選ぶ必要があります。
※賃金水準や雇用条件は年ごと・職場ごとに変わるため、最新情報は必ず公式情報・求人情報などでご確認ください。
地域や職種によっては永住権の可能性もある
オーストラリアでは、特定の職業や地域で人材不足が続いている場合、技術職としてのビザ・永住権につながるルートが用意されることがあります。
- 州や地域が人材不足と判断している分野で働く
- 一定期間、同じ雇用主のもとで経験を積む
- 州政府や地方のスポンサーシップを受けるルートを検討する
など、マッサージ・リメディアルマッサージの経験を活かして永住を目指すケースもゼロではありません。
ただし、永住権に関する条件は頻繁に変わりますし、マッサージセラピストが常に「永住権につながる職種」としてリストされているわけではありません。具体的なビザ戦略については、登録移民エージェントなど専門家への相談が必須です。
オーストラリアで目指せる主なマッサージ関連資格
ここでは、現地のマッサージスクールやTAFEで広く扱われる代表的な資格レベルを整理します。
Certificate IV in Massage Therapy(サーティフィケート4)
- オーストラリアでマッサージセラピストとして働くための最低限のレベルとされることが多い資格
- 基本的なリラクゼーションマッサージ、スウェディッシュマッサージ、簡単なスポーツマッサージなどを学ぶ
- クリニックやサロンで働くための職業倫理・衛生・安全についても学習
Diploma of Remedial Massage(ディプロマ・リメディアルマッサージ)
- Certificate IVで学んだ内容をベースに、痛みの原因や筋骨格の問題に踏み込んだ「治療寄り」のマッサージを学ぶレベル
- 筋膜・リンパ・トリガーポイントなどへのアプローチ、症状別の施術プランニングなどを学習
- 医療保険や各種協会の要件に対応したコースもあり、スポーツクリニックやフィジオクリニック等での需要が高い
さらに上位レベル(例:Advanced Diploma / Myotherapy 等)
学校によっては、リメディアルマッサージの上位資格として、慢性痛のケアや予防管理に特化したマイオセラピー(Myotherapy)関連のコースを開講しているケースもあります。
より高度な技術を求められる分、スポーツチームやリハビリ施設など専門性の高い職場での活躍を目指しやすくなります。
マッサージ系コースを開講している代表的な学校例
ここでは、オーストラリアでマッサージ系コースを開講している代表例として、2校をピックアップします(内容・条件は一例であり、最新情報は必ず各校公式サイトでご確認ください)。
AIS(Australia International School)|シドニー
- 所在地:シドニー中心部
- 特徴:ビューティー&マッサージ分野に強い専門学校。週2〜3日通学のタイムテーブルで、仕事との両立をしながら学びやすいスケジュールが組まれているのが特徴です。
主なマッサージ関連コース例:
- Certificate IV in Massage Therapy
・基礎的なマッサージ技術とリラクゼーションを中心に学ぶ
・健康維持のためのボディケア、アロマやフェイシャルを含む内容の場合も
・週3日程度の通学で、他のアルバイトや勉強と両立しやすいタイムテーブル - Diploma of Remedial Massage
・リメディアルマッサージとしての評価と施術を学ぶ上位資格
・解剖生理学や筋骨格アセスメントなど、より踏み込んだ理論と実技をカバー
・校内&提携クリニックでの実技実習を通じて経験を積むカリキュラムが一般的
Massage Schools of Queensland|ゴールドコースト
- 所在地:ゴールドコースト南部(空港近郊)
- 特徴:マッサージ・アロマ専門の歴史ある訓練校で、短期から長期まで多様なコースを提供。補習授業など留学生向けのサポートも充実していることで知られています。
主なマッサージ関連コース例:
- Certificate IV in Massage Therapy
・リラクゼーションからスポーツマッサージまで幅広く学べる
・身体構造の基礎、クリニックでの勤務に必要な知識もセットで習得 - Diploma of Remedial Massage
・リメディアルセラピストとして、医療寄りの現場で働くための実践的な内容
・リンパ・筋膜・慢性痛のアプローチなど高度な手技を学ぶ
・スポーツクリニックやリハビリ施設、ホテルスパなどへの就職者も多い - アロマテラピー関連コース
・エッセンシャルオイルの基礎、ブレンド、カウンセリング、商品開発などを学ぶ
・ホテルスパやサロンなど、アロマを活用した現場での活躍を目指せる
専門学校・TAFE卒業後に目指せる主な職場
取得する資格や経験によって、卒業後の進路はさまざまです。
- ローカルのマッサージクリニック・治療院
- ホテルスパ・リゾートスパ
- 街中のマッサージショップ・スパサロン
- 日本人経営のマッサージ店・サロン
- 病院・介護施設・緩和ケア施設など(職場による)
- スポーツクラブ・スポーツチームのサポートスタッフ
- リハビリ施設・フィジオクリニックなど
- 将来的には開業・フリーランスとして独立するケースも
雇用形態も、時給制・歩合制・固定+歩合などさまざまで、
「収入の安定性」か「実力に応じた高収入」どちらを重視するかによって、選ぶべき職場も変わってきます。
オーストラリアでマッサージを仕事にする前に知っておきたいポイント
資格取得がローカル就職の前提になりやすい
オーストラリアで「マッサージセラピスト」としてローカルの職場で働く場合、一般的には以下のような資格が求められます。
- Certificate IV in Massage Therapy
- Diploma of Remedial Massage など
どの資格レベルまで求められるかは、職場や担当する役割によって異なるため、希望する仕事の内容とコース内容を照らし合わせて学校選びをすることが大切です。
専門学校・TAFE入学にはIELTS 5.5前後が目安
現地の専門学校やTAFEでマッサージを専門的に学ぶには、一定以上の英語力が必要です。多くのコースでは、
- IELTS 5.5以上(各セクション 5.0〜5.5 以上)
程度を入学基準の目安としていることが一般的です(学校やコースにより異なります)。
英語力が足りない場合は、まず語学学校で英語力を伸ばし、その後マッサージ系コースに進学する「パスウェイ型」のプランを検討するのがおすすめです。
マッサージ留学にかかる費用のイメージ
費用は都市・学校・滞在期間によって大きく変わりますが、シドニーで1年間マッサージ系コースに通うケースを例に、「かかる項目」のイメージを挙げておきます。
- パスポート発行費用
- 学生ビザ申請費用
- 学費(TAFE・専門学校):年間 7,000〜9,000豪ドル程度が一つの目安
- 航空券(往復)
- 海外留学保険
- 家賃・生活費
- ビザ申請時に求められる残高証明(1年滞在で5,000〜6,000豪ドル以上が目安とされることが多い)
トータルでは約17000〜20000豪ドル前後(日本円で約160〜200万円程度)を見積もるケースもありますが、為替レートや物価の変動により大きく変わるため、最新の費用見積もりは個別に試算する必要があります。
オーストラリアのマッサージ留学に関するよくある質問
Q. まったくの初心者でもマッサージ留学は可能ですか?
A. はい、未経験からスタートできるコースが多く用意されています。
基礎から段階的に学ぶカリキュラムになっており、「マッサージに興味がある」「人の身体のケアに関わる仕事をしてみたい」という気持ちさえあれば、入学時点での実務経験は必須ではありません。
Q. マッサージセラピストとしての求人はどのように探しますか?
A. 一般的には、
- 現地求人サイト(Seek など)でマッサージ・セラピストの求人を検索
- 気になるサロンやクリニックに直接レジュメ(履歴書)を持ち込む
- 在学中の実習先・研修先からそのまま求人を紹介される
といったルートがあります。
実習で良い評価を得られると、そのまま採用につながるケースもあるため、学校選びの際には「ワークプレイスメント(実習)の有無・内容」も重要なチェックポイントです。
Q. ワーキングホリデーでもマッサージセラピストとして働けますか?
A. ビザの就労条件を満たしていることに加え、マッサージセラピストとして採用されるには、一般的には現地資格(Certificate IV や Diploma など)の取得が前提になります。
そのため、
- まずは6ヵ月程度、専門学校・TAFEで資格を取得
- その後、ワーホリ期間中にローカルの職場で働くチャンスを探す
といったステップを踏む方も少なくありません。
ビザの就学・就労制限は状況により変わるため、最新の条件は必ず公式情報で確認しましょう。
大学・TAFE進学とマッサージ留学をどう組み合わせるか
オーストラリア大学留学専門サポートセンターでは、「マッサージだけ」を仲介する機関ではなく、
- 大学・大学院(理学療法・運動科学・健康科学・看護など)
- TAFEや専門学校(スポーツ・フィットネス・マッサージ関連コース)
- 語学学校
などを組み合わせながら、「将来どのようなキャリアを目指すか」から逆算した留学プランを一緒に考えることを重視しています。
例えば、
- スポーツ科学や運動生理学を大学で学びつつ、マッサージ資格を活かして現場経験も積みたい
- ヘルスケア分野(看護・リハビリ・公共保健など)の進学を検討しており、その前段階としてマッサージやボディケアの現場に触れてみたい
- ワーキングホリデーやギャップイヤーを利用して、語学+マッサージ+オーストラリア生活を経験したい
といったご希望に応じて、都市選び・学校選び・専攻選びを含めたご相談が可能です。
オーストラリアでマッサージ留学を考えている方へ

マッサージ・リメディアルマッサージは、人の身体と向き合いながら、長く続けられる専門職の一つです。
国際的な資格や経験を積むことで、日本・オーストラリアのどちらでもキャリアを構築しやすい分野でもあります。
ただし、
- 英語力の基準
- 資格レベルの違い
- ビザの条件・永住権との関係
など、事前に整理しておくべきポイントも多くあります。
オーストラリア大学留学専門サポートセンターでは、大学・TAFE進学を中心にしつつ、マッサージやスポーツ・ヘルスケア分野も含めた進路相談を承っています。
「自分の場合はどのルートが現実的なのか知りたい」「大学と専門学校を組み合わせたプランを検討したい」という方は、まずはお気軽にご相談ください。

