オーストラリアはCTやMRIなどの高度な医療機器の普及率が高く、画像診断や放射線治療の分野で世界的にも評価されている国です。その中核を担うのが、医用画像を扱う「放射線技師(Medical Radiation Practitioner)」です。
日本の診療放射線技師とは制度やキャリアパスが異なるため、「どの学部に進めばいい?」「どのくらいの英語力が必要?」「永住権にもつながる?」といったご相談を、当センターにも多くいただきます。
このページでは、オーストラリアの放射線技師の職種の種類、大学での専攻、代表的な大学コース、進学ルートの考え方を、オーストラリア大学留学専門サポートセンターの視点から整理してご紹介します。
オーストラリアの放射線技師の主な職種
オーストラリアでは「放射線技師」とひとことで言っても、仕事内容によっていくつかの職種に分かれています。代表的なものは次の4つです。
- Medical Diagnostic Radiographer(診断放射線技師)
レントゲン、CT、MRIなどの装置を操作し、医師が診断に用いる画像を撮影する職種です。一般撮影から救急、インターベンション領域まで幅広く関わります。 - Medical Radiation Therapist(放射線治療専門技師)
がん治療などで放射線治療装置(リニアックなど)を用い、放射線腫瘍医・医学物理士と連携しながら治療計画に基づき照射を行います。 - Nuclear Medicine Technologist(核医学技術者)
放射性医薬品を投与し、体内の機能や代謝を評価するPET・シンチグラフィなどの検査を担当します。 - Sonographer(超音波検査士)
超音波装置を使って心臓・腹部・血管などの検査を行う職種です。一般的には、上記のMedical Radiation分野での経験や別学位の上に、超音波の大学院レベルの専攻を重ねて目指すケースが多い職種です。
このうち、日本からの留学生が最初の進学先として目指すことが多いのは、学士課程(4年制)のMedical Imaging系コースから資格取得と登録につながる「診断放射線技師」です。
日本の診療放射線技師との違いと登録の仕組み
日本では国家試験に合格すると「診療放射線技師」の国家資格が付与されますが、オーストラリアでは次のような仕組みで資格管理が行われています。
- 登録機関:Medical Radiation Practice Board of Australia(MRPBA)
- 対象:Medical Imaging(診断)、Radiation Therapy(治療)、Nuclear Medicine(核医学)などの放射線関連職種
- 登録の前提:MRPBAが認可した大学コースの修了 + 所定期間の臨床実習(多くの学士コースは4年間のうちに組み込み)
また、オーストラリアへの技術移住(Skilled Migration)を視野に入れる場合、放射線技師(Medical Diagnostic Radiographer / Medical Radiation Therapist / Nuclear Medicine Technologist)は中長期的な人材不足リスト(いわゆるスキルリスト)に掲載されていることが多く、技術独立永住ビザや州スポンサー永住ビザの対象職種になり得る点も特徴です。
ただし、ビザ制度は頻繁に改定されています。永住権を前提とした進学プランを検討される際は、必ず登録移民エージェントなどの専門家による最新情報の確認が不可欠です。
オーストラリアで放射線技師を目指す一般的なステップ
高校卒業からオーストラリアの放射線技師を目指す場合、代表的なステップは次のような流れです。
- 高校段階で理系科目をしっかり履修する
ほとんどの大学で、数学(Maths B相当)や物理、場合によっては化学・生物が前提科目になっています。日本の高校で理系科目をしっかり選択しておくと出願の選択肢が広がります。 - 英語力の基盤をつくる
診断放射線技師系コースは、IELTS Academic 7.0 前後(各セクション6.5〜7.0以上)と、医療系学部の中でもトップレベルの英語力が求められます。すぐにそのスコアに届かない場合は、語学学校+ファウンデーションコース(大学準備コース)などを組み合わせて段階的に伸ばしていくのが現実的です。 - 大学の学士課程(4年制)のMedical Radiation関連コースに進学
多くの大学で、3年間のアカデミック+約1年間の臨床実習がセットになった4年制プログラムを提供しています。卒業時に、MRPBA登録に必要な実習時間を満たせるかどうかが重要なチェックポイントです。 - 卒業後、MRPBAへの登録申請
認可コースを修了し、追加条件(英語力や身元・健康チェックなど)を満たすことで、Medical Imagingなどの職種としての登録が可能になります。 - 卒業生ビザや就労ビザで臨床経験を積む
卒業後は、卒業生ビザ(Temporary Graduate visa)で臨床経験を積み、その先に永住権を含めた長期的なキャリアを検討していくケースが多く見られます。
医療系学部の中でも、入学難易度・在学中の学習負荷ともに非常に高い分野です。一方で、臨床の現場で直接患者さんの診断・治療に関わり、高度な専門性を活かして長期的なキャリア形成ができる職種でもあります。
主な大学と代表的なMedical Imaging系コース
ここでは、4年制で臨床実習を含むMedical Radiation系の代表的な大学を一部ご紹介します。いずれも詳細な入学条件や授業料は毎年見直されますので、最終的には各大学の公式情報をご確認ください。
University of South Australia(南オーストラリア大学)|アデレード
- 専攻例:Bachelor of Medical Radiation Science(Medical Imaging / Radiation Therapy / Nuclear Medicine)
- 特徴:Medical Imaging・Radiation Therapy・Nuclear Medicineの3専攻を同じ学部内で提供している数少ない大学。付属カレッジ(SAIBT)経由での進学ルートもあり、高校卒業後にファウンデーション+ディプロマを経て学部に編入するプランも組みやすいのが特徴です。
- ポイント:コース内に長期の臨床実習が組み込まれており、MRPBA登録要件を満たす形で設計されています。
Curtin University(カーティン大学)|パース
- 専攻例:Bachelor of Science(Medical Radiation Science – Medical Imaging / Radiation Therapy専攻)
- 特徴:西オーストラリア州を代表する総合大学で、放射線科学の教育・研究に力を入れている大学のひとつです。物理・数学を重視する入学基準が設定されており、理系科目が得意な方に向いています。
- ポイント:学士課程の中で規定時間数以上の臨床実習を行い、卒業後のプロフェッショナル登録につながるカリキュラム構成です。
Queensland University of Technology(QUT)|ブリスベン
- 専攻例:Bachelor of Medical Imaging(Honours)
- 特徴:「real world university」を掲げ、実務に直結したプログラムで知られる大学です。Medical Imaging専攻も臨床実習の比率が高く、ブリスベン周辺の病院・検査センターなどで学ぶ機会が豊富です。
- ポイント:高校から直接出願する場合、日本の高校の成績に加えて、物理+数学Bの履修・高い英語力が求められます。日本の大学1年次または関連専門学校からの編入ルートが検討されることもあります。
Deakin University(ディーキン大学)|ジーロング
- 専攻例:Bachelor of Medical Imaging(Honours)
- 特徴:メルボルン近郊ジーロングにキャンパスを持ち、地域の病院と連携した実習が特徴の大学です。付属カレッジのファウンデーションを経由して成績上位者がMedical Imagingに進学できる「選抜ルート」が用意されています。
- ポイント:コース定員が非常に限られており、ファウンデーションでの高い成績(目安80%以上)+英語力が求められます。
このほか、モナッシュ大学やシドニー大学などでも放射線関連のコースが開講されていますが、臨床実習の組み込み方や留学生の受け入れ状況は大学・専攻によって大きく異なります。コース名だけで判断せず、
- MRPBAの認可状況
- 臨床実習の期間・場所
- 留学生の受け入れ可否
- 卒業後の登録までのステップ
を必ずセットで確認することが重要です。
Sonographer(超音波検査士)を目指したい方へ
超音波検査士(Sonographer)は、オーストラリアでは通常、関連分野の学士号+大学院レベルのSonography / Ultrasound専攻を組み合わせて資格取得・登録を目指す職種です。
ただし、多くの超音波関連の修士・大学院ディプロマは、オーストラリア国内で既に医療職として働いている人材向けのコースとして設計されており、学生ビザ(Subclass 500)での留学生の受け入れが限定的・不可のものも少なくありません。
そのため、
- まずMedical Imagingなどの学士課程で放射線系の基盤を作る
- 卒業後の就労・経験を踏まえて、Sonography系コースの要件を満たせるか確認する
という「中長期の2ステップ型キャリア」として検討するのが現実的です。
放射線技師としてのキャリアとビザ・永住権のイメージ
放射線技師は、医療系の中でも専門性が高く、かつ全国で一定の需要が見込まれている職種のひとつです。そのため、一定の条件を満たせば、次のようなビザで永住権を目指せる可能性があります。
- 技術独立永住ビザ(Skilled Independent visa)
- 州スポンサー永住ビザ(Skilled Nominated visa)
- 地方州スポンサー技術ビザ(Skilled Work Regional visa)
- 雇用主スポンサー型の就労・永住ビザ など
ただし、必要な英語レベル、年齢、ポイント、指定職種リストの内容などは毎年のようにアップデートされます。「放射線技師=必ず永住権」というわけではなく、あくまで選択肢のひとつと捉え、
- まずは「医療職としてどのように働きたいか」というキャリア軸
- そのうえで「長期的にどの国でキャリアを築きたいか」というライフプラン
を整理したうえで、ビザ戦略は登録移民エージェントと一緒に検討していくことをおすすめします。
オーストラリア大学留学専門サポートセンターにご相談ください

放射線技師を目指す進学ルートは、学力・英語力・理系科目の履修状況・ご年齢などによって最適なプランが大きく変わります。また、大学ごとに
- ファウンデーション/ディプロマ経由で入れるかどうか
- 臨床実習の場所・期間
- 日本の大学・専門学校からの編入が現実的かどうか
も異なります。
オーストラリア大学留学専門サポートセンターでは、
- 日本でのご経歴・成績(高校/大学/専門学校)
- 現在の英語力
- いつまでに卒業したいか、どの都市で学びたいか
といった条件を踏まえながら、複数大学の選択肢を並べて比較できる進学プランをご提案しています。ビザや永住権についての具体的な条件・最新情報が必要な場合は、提携する登録移民エージェントへのご相談も手配可能です。
「放射線技師に興味があるが、自分の学力・英語力で現実的に目指せるのか知りたい」という段階でも構いません。まずはお気軽に初回カウンセリングをご利用ください。

