オーストラリアでは高齢化が一気に進み、Aged Care(高齢者介護)分野の人材不足が長年の課題になっています。こうした背景から、介護士として働きながら永住権を目指せるルートとして、Aged Care Worker を対象にした雇用主スポンサー制度(Labour Agreement や DAMA など)が整備されつつあります。
一方で、「条件が良さそうだから、とりあえず介護コースに行く」という選び方をすると、英語力・体力・適性の面でミスマッチを感じてしまうケースも少なくありません。
このページでは、オーストラリア大学留学専門サポートセンターの視点から、
- オーストラリアの介護士で永住権を目指す際の全体像
- 必要な資格・英語力・費用の目安
- ビザの流れを意識したスタディプラン例
- 介護コースを開講している代表的なTAFE・専門学校
をまとめてご紹介します。
※ビザ条件は頻繁に変更されます。ここでの内容はあくまで一般的な参考情報です。実際の申請時には必ず、オーストラリア内務省(DHA)の公式情報や登録移民エージェントから最新情報をご確認ください。
オーストラリア介護士で永住権を目指せる?主なビザルートのイメージ
介護士(Aged Care Worker)は、他の多くの職種とは異なり、Skilled Occupation List に載っていないにも関わらず、特例的に雇用主スポンサーの対象となっている職種です。主なルートは以下のとおりです。
- サブクラス 482:Skilled In Demand Visa(雇用主スポンサービザ)
└ Labour Agreement Stream / DAMA Stream 経由で Aged Care Worker としてスポンサーを得る - サブクラス 186:Employer Nomination Scheme(雇用主指名制度ビザ)
└ 上記 482 などで一定期間フルタイム勤務したのち、永住権を申請するのが一般的な流れ
元の記事でも紹介されているように、Labour Agreement Stream / DAMA Stream では、
- 学位条件:Certificate III in Individual Support
- 英語条件:IELTS 5.0〜5.5 程度(各スコア基準あり)
- 就労歴:ストリームによって 0〜1 年以上の実務経験
など、一般的な技術職に比べると、永住権ルートへのハードルが低く見えるのが特徴です。
ただし現場では、
- ビザ条件として就労歴が不要でも、実際の採用では経験者が優先されやすい
- 高い英語力(聞く・話す)が求められる職場が多い
- 夜勤・身体介助など体力的にも精神的にもハードな現場が多い
といった現実もあるため、「永住権が取りやすそうだから」という理由だけで進路を選ぶのではなく、介護という仕事そのものへの興味や適性もセットで考えることが大切です。
オーストラリアでの介護士(Aged Care Worker)の主な仕事内容
介護施設や在宅ケアの現場では、次のような業務を日常的に行います。
- ベッドからの起床・移動のサポート
- トイレや入浴(シャワー)介助、着替えの補助
- オムツ交換や清拭などの身体介護
- 食事の準備・配膳・見守り
- お部屋や共用スペースの掃除・環境整備
- レクリエーションの企画・運営
- 利用者さん・ご家族とのコミュニケーション
- 同僚スタッフとの連携・情報共有
多くの職場ではチームでケアを行うため、英語でのコミュニケーションは必須です。
書類記録や引き継ぎメモを英語で書く場面も多く、「英語が苦手だけど資格さえ取れれば何とかなる」という世界ではない点も、あらかじめ理解しておきたいポイントです。
介護士に必要な資格・英語力・費用の目安
オーストラリアで Aged Care Worker として働き、雇用主スポンサーにつなげていくためには、最低限の関連資格が必要です。ここでは代表的な 3 コースを、留学生目線で整理します。
Certificate III in Individual Support(個別支援/高齢者ケアの基礎)
- 就学期間:約 3 ヵ月〜 1 年
- コース費用:約 5,000〜10,000 豪ドル
- 英語条件:IELTS 5.5〜6.0(各 5.0〜5.5 以上)※学校により異なる
- 学ぶ内容の一例:
- 高齢者の尊厳と自立を支える考え方
- 個別支援計画に基づく基礎的な介助
- 健康管理・感染症予防・安全な移乗方法
- 多様な背景を持つ高齢者への理解
- 認知症ケア、虐待防止、緩和ケアの基礎
- 想定キャリア:Aged Care Worker、Home / Community Care Worker など
Certificate IV in Ageing Support(上級高齢者ケア)
- 就学期間:約 6 ヵ月〜 1.5 年
- コース費用:約 6,000〜15,000 豪ドル
- 英語条件:IELTS 5.5〜6.0(各 5.0〜5.5 以上)
- 学ぶ内容の一例:
- 高齢者の権利・自己決定を尊重した支援
- 個別支援計画の立案・モニタリング
- 認知症・リスクの高い高齢者への高度な対応
- チームリーダーとしてのマネジメント・シフト調整
- 想定キャリア:Senior Care Worker、チームリーダーやシフトスーパーバイザーなど
Diploma of Community Services(地域・福祉支援の専門職)
- 就学期間:約 1〜2 年
- コース費用:約 8,000〜17,000 豪ドル
- 英語条件:IELTS 5.5〜6.0(各 5.0〜5.5 以上)
- 学ぶ内容の一例:
- ケースマネジメント・カウンセリングの基礎
- メンタルヘルス・障害・家庭内暴力などへの支援
- 多文化社会・先住民コミュニティの理解
- 法的・倫理的枠組みの理解
- 想定キャリア:Community Worker、Case Worker / Case Manager など
ポイント:永住権を見据える場合でも、「とりあえず最短で Certificate III だけ」ではなく、自分の年齢・英語力・ビザの有効期限を踏まえて、Certificate IV や Diploma とのパッケージも含めて計画を立てることが重要です。
タイプ別・介護士として永住権を目指すスタディプランの例
ここからは、元記事の情報をもとに、年齢・ビザ状況別のスタディプランを整理します。
※あくまで「こうした組み立て方が多い」という一般的な例であり、個々のケースによって最適なルートは異なります。
① ワーキングホリデーから雇用主スポンサービザを目指す(30歳前後)
対象:30歳以下でワーホリビザを活用したい方
- Certificate III in Individual Support(Ageing)Fast Track を受講(約 12〜17 週)
- ワーホリは「17 週間までの就学」が上限のため、短期集中(Fast Track)コースを選ぶのが前提
- コース修了後、残りのワーホリ期間で介護士として実務経験を積む
- 勤務先で雇用主スポンサー(482 / Labour Agreement など)候補を探す
理論上は、ワーホリ → 直接 482(SID) というルートもあり得ますが、未経験者が数ヵ月でスポンサーを得るのは現実的にはかなりハードルが高いのが実情です。そのため、
- セカンド/サードワーホリで滞在期間を延長
- 学生ビザに切り替えてコースや実務経験を積む
など、数年単位の中長期計画で考える必要があります。
② 雇用主スポンサービザ(Labour Agreement Stream)を目指す(〜40歳)
対象:40歳未満で、都市部も含め広いエリアでスポンサー先を探したい方
推奨される組み合わせの一例:
- Certificate III in Individual Support(Ageing) + Certificate IV in Ageing Support
または - Certificate III in Individual Support(Ageing) + Diploma of Community Services
理由としては、
- Certificate III 修了直後にスポンサーを獲得するケースは少ない
- フルタイム雇用・ビザ書類準備などに最低半年程度は必要なことが多い
- 関連コースを継続して履修することで、学生ビザでの滞在期間を確保しつつ経験を積める
といった点が挙げられます。永住権の要件を満たすことだけでなく、現場で「戦力」として評価してもらえるスキルと経験を積むという視点も欠かせません。
③ 雇用主スポンサービザ(DAMA Stream)を目指す(40歳以上も含む)
対象:40歳以上でも介護分野で長期的なキャリア・永住権を目指したい方
DAMA(Designated Area Migration Agreement)は、地方指定エリア(DAMA エリア)での雇用主スポンサー制度で、多くの場合、
- Certificate III in Individual Support 修了後、1 年以上の介護士としての就労歴
が求められます。卒業ビザ(485)が使えないコースであることを踏まえると、
- Certificate III in Individual Support(Ageing)+ 1 年以上の Certificate IV / Diploma
- あるいは Certificate III + Certificate IV + Diploma の 3 コースパッケージ
のように、学生ビザで 1 年以上働ける期間を確保する構成がよく選ばれます。
また、DAMA はエリアごとに条件が異なり、スポンサーになれる雇用主も限定されています。
就学先は必ずしも DAMA エリアである必要はありませんが、在学中から現地で求人・ネットワーキングを進めたい場合、DAMA 指定地域にある学校を選ぶという考え方もあります。
介護士コースを学べる代表的なTAFE・専門学校
ここでは、元記事で紹介されている学校のうち、オーストラリア大学留学専門サポートセンターにご相談いただく方にも比較的なじみやすい代表例をピックアップしてご紹介します。
※学費や入学条件は年度により変更されます。必ず各学校の公式サイト・最新パンフレットでご確認ください。
TAFE Queensland(TAFE QLD)
クイーンズランド州政府が運営する州立の職業訓練校です。設備の充実度やサポートの安定感から、「しっかり基礎から学びたい」方に人気があります。
- コース名:Certificate III in Individual Support(Ageing / Ageing + Disability / Disability)
- キャンパス:ブリスベン、ゴールドコースト など
- コース期間:約 6 ヵ月
- 学費目安:約 6,800 豪ドル(年度により変動)
- 入学条件:高校卒業相当、IELTS 6.0(各 5.5 以上)程度
Australian Language Schools(ALS)
ブリスベンにある語学学校併設の専門学校で、語学 → 介護コースと一貫して学びやすいのが特徴です。比較的少人数で、講師との距離が近い環境を好む方に向いています。
- コース名:Certificate III in Individual Support
- キャンパス:ブリスベン
- コース期間:約 27 週
- 学費目安:約 5,500 豪ドル
- 入学条件:高校卒業相当、IELTS 5.5 程度
Greenwich College(グリニッジ・カレッジ)
シドニー・メルボルン・ブリスベンなど、主要都市にキャンパスを持つ大規模校です。
専任の実習コーディネーターがいる点や、キャンパスの新しさも人気の理由です。
- コース名:Certificate III in Individual Support
- キャンパス:ブリスベン、シドニー、メルボルン、ゴールドコースト、パース、アデレード
- コース期間:約 32 週
- 学費目安:約 6,940 豪ドル
その他、介護コースを開講している主な学校
この他にも、各州には多くの介護コース提供校があります。以下は元記事で挙げられている一例です(アルファベット順)。
クイーンズランド州(QLD)
- Charlton Brown(チャールトン・ブラウン)
- Academique(アカデミーク)
- Shafston(シャフストン)
- Imagine Education(イマジン・エデュケーション)
- Cairns College of English and Business(CCEB)
- Education Training & Employment Australia(ETEA)
- Australia Education Group(ALG)
- Canterbury Technical Institute(CTI)
- Mastery Institute Australia(MIA)
- Academia(アカデミア)
- Queensland Academy of Technology(QAT)
- Alana Kaye College など
ニューサウスウェールズ州(NSW)・ビクトリア州(VIC)ほか
- TAFE NSW、TAFE South Australia、TAFE Western Australia など各州の TAFE
- Education Training & Employment Australia(ETEA)
- Australia Learning Group(ALG)
- Signet Institute(シグネット・インスティチュート)
- Stanley College、APSI などの私立カレッジ
どの学校が自分に合うかは、「学費」「ロケーション」「実習先のサポート」「卒業後の求人環境」などを総合的に見て判断する必要があります。
介護 × オーストラリア留学の相談は、当センターへ

介護分野でオーストラリア永住権を目指すルートは、以前に比べれば広がりつつありますが、
- ビザの条件が頻繁に変わる
- エリアによって DAMA の要件が異なる
- 年齢・英語力・学歴・職歴によって取れる選択肢が大きく変わる
など、個々の状況によって「最適なプラン」がまったく違うのが実情です。
オーストラリア大学留学専門サポートセンターでは、
- 大学・大学院への進学を軸にしつつ、TAFE や専門学校を組み合わせたキャリア設計
- 看護・福祉・心理・医療系など、将来的に介護分野とも親和性の高い専攻の検討
- パートナー教育機関との連携を活かした、現地キャンパス情報の提供
といった形で、「学び」から逆算した長期キャリアのご相談を承っています。
ビザの個別要件については、必要に応じて登録移民エージェントなど専門家へのご相談をおすすめしながら、進学面のサポートを行います。
「介護でオーストラリアの永住権も視野に入れたい」という方は、まずは現在のご年齢・英語力・ご希望の都市などをお知らせください。
あなたの状況に合う大学・TAFE・専門学校の組み合わせや、現実的なスケジュール感を一緒に整理していきましょう。

