人口の約4分の1が海外生まれと言われる多文化社会オーストラリアは、アジア太平洋地域に向けた国際援助・開発協力のハブとして大きな役割を担ってきました。
こうした環境の中で学ぶ国際開発学(Development Studies / Global Development)は、将来「国際協力・NGO・国際機関・公共政策」などを目指す方にとって、実務と理論を結びつけて学べる有力な選択肢です。
ここでは、
- 開発学とはどのような分野か
- オーストラリアの大学院で何が学べるのか
- 代表的な大学・プログラムの特徴
- 日本人からの出願時のポイント
を、オーストラリア大学留学専門サポートセンターの視点から整理します。
国際開発学とは?(Development Studies の領域)
国際開発学は、主に発展途上国・新興国や脆弱な地域を対象に、貧困・格差・ガバナンス・環境・保健・ジェンダー・紛争など、複数の課題を総合的に扱う学問領域です。
オーストラリアの大学・大学院では、以下のようなテーマを組み合わせて学ぶケースが一般的です。
- 開発理論・開発政策
- 貧困削減・包摂的成長・人間の安全保障などの理論枠組み
- 国際機関・ドナー・現地政府・NGOの役割
- 開発経済学・統計・評価
- マクロ・ミクロ開発経済学
- インパクト評価、プロジェクト評価、データ分析
- コミュニティ開発・参加型アプローチ
- 住民参加型開発(Participatory Development)
- 先住民コミュニティや農村での社会開発
- ガバナンス・人権・ジェンダー
- ジェンダーと開発、社会的包摂
- 政策・法制度・ガバナンス改革
- 環境・気候変動・災害
- 気候変動への適応、レジリエンス
- 自然災害、紛争・環境難民、資源管理
- 公共保健・教育・都市化などのセクター別開発
国際関係学(International Relations)や平和学(Peace and Conflict Studies)と重なる部分も多く、「国際政治×開発」「平和構築×開発」など、複合的な専攻も選びやすいのがオーストラリアの特徴です。
どんな人に向いている分野?
- JICA・国連・国際NGO・財団・シンクタンク等で開発協力に携わりたい
- 日本の省庁・自治体・企業でSDGs・国際協力・ESGに関わりたい
- 既に教育・福祉・NGO・企業CSRなどで働いており、キャリアの軸を「開発」に寄せたい
- 国際関係や地域研究を学んだうえで、より実務寄りの開発スキルを身につけたい
特に大学院レベルのDevelopment Studiesは、
「既に分野に関心があり、将来のキャリアをかなり具体的にイメージしている方」にフィットする分野です。
オーストラリアで学ぶメリット
1. アジア太平洋にフォーカスした実務的カリキュラム
オーストラリアは地理的にも政治的にもアジア太平洋地域の開発協力の主要プレーヤーです。
そのため、多くの大学が以下のような地域に焦点を当てています。
- 東南アジア・南アジア・太平洋島嶼国
- 気候変動・海面上昇・自然災害に脆弱な地域
- 紛争後の復興やガバナンス課題を抱える国
2. 多様なバックグラウンドの学生と学ぶ
現地学生はもちろん、アジア太平洋・アフリカ・中南米など世界各地からの留学生と議論する環境があります。
将来のネットワークづくりにも直結します。
3. 専門テーマに特化したプログラムが豊富
同じ「Development Studies」でも、大学によって強みが異なります。
- 開発経済・公共政策に強い大学
- 環境・気候変動×開発に強い大学
- コミュニティ開発・社会開発に強い大学
- 災害・レジリエンス・ガバナンスに強い大学 など
ご自身のキャリアゴールに合わせて、大学と専攻テーマを精査することが重要です。
代表的な大学院プログラム
ここでは、国際開発学分野で代表的な大学院(修士号)をピックアップしてご紹介します。
学費や入学条件は年度によって変動するため、出願前に必ず最新情報を確認します。
オーストラリア国立大学(ANU)|開発学の“総本山”的存在
キャンベラにあるANUは、開発学・開発経済学・環境と開発・太平洋地域開発など、開発分野の大学院プログラムが非常に充実している大学です。
- 主な修士プログラムの例
- Master of International and Development Economics
- Master of Environmental Management and Development
- Master of Pacific Development
- Master of Applied Anthropology and Development
- Master of Public Policy(Development Policy 専門)
- 特徴
- 開発経済・環境政策・太平洋地域など明確な専門軸を持ちやすい
- 政府機関・シンクタンク・国際機関が集まる首都キャンベラという立地
- 期間の目安
- 学士バックグラウンドや職歴に応じて1年/1.5年/2年コースが用意されている場合が多い
- 入学の目安
- 関連分野の学士号+一定以上のGPA
- 場合によっては関連職歴(数年)での出願・期間短縮も可能
- 英語条件は概ねIELTS 6.5(各6.0以上)レベル
メルボルン大学|ジェンダー・ガバナンスを含む幅広い開発学
人文社会科学分野でも評価の高いメルボルン大学では、Master of Development Studiesが代表的な開発学プログラムです。
- 特徴
- 貧困・不平等・ジェンダー・環境・ヘルス・人権など、かなり幅広い科目群
- ジェンダーと開発、ガバナンス、都市・環境などのテーマを深掘りしやすい
- 国際的なリサーチネットワークやインターンシップ機会も豊富
- 期間の目安
- 学歴・職歴に応じて1年/1.5年/2年の構成
- 入学の目安
- 分野を問わず学士号+一定以上の成績
- 関連分野の学習歴や職歴がある場合は期間短縮の可能性あり
- 英語条件は概ねIELTS 6.5(各6.0以上)
西オーストラリア大学(UWA)|多角的アプローチのInternational Development
パースに位置するUWAのMaster of International Developmentは、
経済・ガバナンス・環境・資源・社会政策などを組み合わせて学ぶ多角的アプローチが特徴です。
- 特徴
- コア科目+選択科目の組み合わせで、自分なりの専門性を形成
- 関連学歴を持つ場合、単位免除で1.5年コースになることも
- 入学の目安
- 分野を問わず学士号(成績条件あり)
- 英語は概ねIELTS 6.5(各6.0以上)
ジェームズクック大学(JCU)|Global Development ×熱帯・太平洋
ケアンズキャンパスで学ぶMaster of Global Developmentは、
SDGs・熱帯・アジア太平洋地域に強いプログラムです。
- 専門分野の例
- Disaster resilience and natural resource management
- Public health
- Sustainable development planning and policy
- Indigenous futures
- Governance and social change など
- 特徴
- 熱帯地域・島嶼国・先住民コミュニティなどにフォーカスした科目群
- 関連機関でのインターンシップ科目も選択可能
- 入学の目安
- 分野を問わず学士号(関連分野であれば期間短縮も検討可)
- 英語条件はIELTS 6.0(各6.0目安)前後
グリフィス大学(Griffith)|SDGsに紐づいたGlobal Development
ブリスベン近郊のNathanキャンパスで開講されるMaster of Global Developmentは、
国連の持続可能な開発目標(SDGs)に対応する形で設計されたプログラムです。
- 専門トラックの例
- Development Economics
- Human Rights and Development
- Climate Change and Disaster Management
- Health and Development
- Law, Politics and Planning
- 特徴
- 経済・人権・環境・ヘルス・政策など、テーマ別にコースを組み立てられる
- 入学の目安
- 分野を問わず学士号+一定GPA
- 関連学歴・職歴があれば、期間短縮の1.5年・1年コースも可能
ラ・トローブ大学/RMIT/マードック大学 など
上記以外にも、メルボルンやパースの大学を中心に、
開発学・国際援助・国際研究×開発を扱う大学院プログラムが開講されています。
- ラ・トローブ大学:
- Master of International Development(コミュニティ・公共保健・ガバナンスなど)
- インターンやスタディアブロード科目も用意
- RMIT大学:
- Master of Global Studies(Development専攻を選択可能)
- 都市・サステナビリティ・危機管理などと組み合わせて学ぶスタイル
- マードック大学:
- Master of Development Studies
- NPOや国際機関との連携科目があり、実務寄りのカリキュラム
ご志望のテーマ・学歴・職歴によって、適した大学は大きく変わります。当センターでは、複数大学を横並びで比較しながら候補を絞り込んでいきます。
学部レベル(Bachelor)から開発学を学ぶ場合
記事タイトルは大学院寄りですが、将来的に開発学の修士を見据えて学部から準備したい方も多くいらっしゃいます。代表的な例として:
- Bachelor of Arts – Development Studies / International Development
- Bachelor of Social Science – Development
- Bachelor of International Studies – Development / International Inequality and Development
- Bachelor of Arts – International Aid and Development
などがあり、多くは政治・国際関係・経済・社会学・地域研究と組み合わせて履修するカリキュラムになっています。
出願のポイント(大学院)
学歴・職歴の要件
国際開発学の修士は、他分野と比べると「職歴を重視」する大学も少なくありません。
- 学士号:分野不問可の大学が多いが、国際関係・経済・社会学・地域研究などは特にスムーズ
- 職歴:
- 関連職歴3〜5年以上で出願条件を満たすケース
- 学歴+職歴の組み合わせで**期間短縮(1〜1.5年コース)**が可能なケースも
- 成績:多くの大学で一定GPAが求められます(大学ごとに基準は異なります)
英語力の目安
多くの大学院で
IELTS Academic 6.5(各セクション6.0以上)
が一つの基準です(一部6.0や7.0を求めるコースもあり)。
不足している場合は、
- 付属語学学校のEAPコースを経由するルート
- 条件付きオファー(英語+修士のパッケージ)
なども設計可能です。
卒業後のキャリア例
- 国際機関・二国間機関
- 国連機関、世界銀行グループ、アジア開発銀行、JICA など
- 国際NGO・NPO
- 貧困削減、人権、教育、保健、環境、ジェンダー等のプロジェクトスタッフ/コーディネーター
- 政府・自治体・公的機関
- 国際協力・援助政策・移民/難民政策・SDGs推進・国際部門 など
- 民間企業・コンサルティング
- ESG・サステナビリティ・サプライチェーン、インパクト投資、社会課題解決ビジネス
- 研究職・博士課程進学
- 開発経済学・公共政策・人類学・社会学・地域研究などでのPhD進学
開発学は「学歴だけで就職が決まる」分野ではありません。インターン・現場経験・関連ボランティアとの組み合わせが重要になります。
出願〜ビザまでの基本フロー(画一的・汎用ルート)
- 目指すキャリア・専門領域の言語化
- 例:開発経済/環境×開発/ジェンダー/保健/教育/人権…
- 大学・プログラムの候補洗い出し
- テーマ・都市・学費・期間・インターン有無などで比較
- 英語スコア・学歴・職歴の棚卸し
- 足りない部分を確認し、必要ならEAPやIELTS対策を計画
- 出願書類の準備
- 成績証明・卒業証明・英文CV・志望動機(Statement of Purpose)・推薦状など
- オファー受領〜CoE発行
- 学生ビザ申請・OSHC加入・渡航準備
※入学要件・学費・コース構成は毎年更新されます。当センターでは、出願前に最新条件を確認したうえでプランを提案しています。
当センターがサポートできること(無料)

- 希望進路・バックグラウンドに応じた
大学・専攻候補のリストアップと比較 - 学力・職歴・英語力を踏まえた
現実的な出願ルート・期間(1/1.5/2年)の設計 - 出願書類づくりの伴走
- 志望動機(SOP)の構成
- CV・推薦状で強みをどう見せるか
- 合格後の
CoE取得〜学生ビザ申請のステップ案内 - 必要に応じて、学部→修士への長期プランの設計
開発学は「大学選び」よりも「キャリア設計ありき」で考えるほど、ミスマッチが減ります。
興味段階でも構いませんので、まずは現状と希望を整理するところから一緒に進めていきましょう。

